前頭葉に愛を

なかつ(@nktu_pdu)のブログ

感想:幸福はぼくを見つけてくれるかな?


大学に入り、アートにはまって、展覧会にそれなりに行くようになったから、感想をちゃんと書こうと考えはじめ早数年。
はてなダイアリーに色々書いていこうと思います。

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東京オペラシティ アートギャラリーで開催中の、「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」に行ってきた。

展覧会タイトルは、展示作品に登場する言葉より。(だと思う)
石川コレクションから10人の作品を展示した展覧会。大理石の作品、映像作品、センサーのついたデバイスアート的なものなど、作品形態は多岐に渡る。
全体的に、無垢なニヒリズム(大人ぶった子ども、みたいな表現だ……)が感じられるような。

石川さんという方のコレクションなのか、島袋道浩やペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス(大好き!)の作品があるなんて豪華だなーと思っていたが、このコレクションの主、石川康晴さんは、あの「earth music&ecology」を立ち上げた方だそうだ。驚き。
私もお金持ちになって、アートコレクターになりたい……。

まず入り口にあったのは、ピエール・ユイグの「ネーム・アナウンサー」。イケメンのお兄さんに「名前を教えて」と言われて、自分の名前を呼ばれるのは、ちょっと嬉しかった(笑)
しかしあのお兄さんは、お兄さんはオペラシティのスタッフさんなんだろうか? 俳優さん?

全体を通して映像作品が多かったが、どの作品もじっくり見ることができた。鑑賞人数がさほど多くなかったからゆったりとした気分でまわれた、ということもあると思うが、それ以上にどの作品もストーリー性があって続きが気になってしまう作品だったからということも大きい。

特に私が好きだったのは、小泉明郎の「僕の声はきっとあなたに届いている(シングル・スクリーン・ヴァージョン)」。これがもう、泣ける。泣いた。美術館で暗闇の中、スクリーンを見つめて泣いた。

雑踏の中、携帯で母親を温泉に誘おうとする男性。お金のことは気にしなくていいよ、週末あけといてね、と携帯の向こうに話しかける男性。会話が終わった後、スクリーンには、母親へのメッセージが映し出される。もう届かないだろうけど、と悲しい言葉が映ったあとに、今度は、通話の相手の声と共に温泉の会話の映像が反復される。

最後まで見終わったあとに、タイトルを考えるとまた寂しい。男性にあったのは狂気か、それとも親への愛情か。ぞっとするような、じんわりするような。世の中を皮肉った冷ややかな作品とも取れるし、感情に満ちた人間的な作品ともとれる。この作家の、他の作品も見てみたいと思った。
映像の終わりが、映画っぽくて、またそこが「わかってるね!」という感じ。男性が前を見た瞬間に、メロディーが中途半端なところで切る。唐突に途切れる音楽が、心に余韻を残す。
この作品の隣が、フィッシュリ&ヴァイスの作品なのもよかった。なかなか、作品配置の順序がうまい展覧会だと思う。

幸福はぼくを見つけてくれるかな?
東京オペラシティ アートギャラリー